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シェア・オブ・ボイス(SOV)とは?

シェア・オブ・ボイス(SOV)は、事業成長との関連性が実証されている数少ないメディア指標のひとつです。正しく活用すれば、自社ブランドがカテゴリー内で競合より存在感を発揮できているのか、それとも埋もれてしまっているのかが分かります。さらに長期的には、その差が市場シェアの変動につながる可能性も見えてきます。

シェア・オブ・ボイス(SOV)とは、カテゴリー全体の広告出稿量に占める自社ブランドの広告出稿比率のことで、通常はパーセンテージで表されます。 一方、シェア・オブ・マーケット(SOM)は、そのカテゴリーにおける実際の売上シェアを指します。両者は関連していますが、性質は異なります。SOVは「見えている量」を測る指標であり、SOMは「その結果」を測る指標です。SOVを高めれば長期的にSOMの向上につながることもありますが、両者が常に連動するという通説は正しくありません。むしろ、この二つの間に生じるギャップにこそ、戦略のヒントがあります。

SOVの計算方法

自社の広告費をカテゴリー全体の広告費で割り、100を掛けます。 たとえば4社が競合しており、自社の広告出稿がカテゴリー全体の40%を占めているなら、SOVは40%です。

何を基に算出するかはメディアによって異なります。従来型メディアでは、広告費、GRP、インプレッションなど、有料広告の実績を競合と比較してSOVを算出します。デジタル領域ではさらに、オーガニック検索での露出、ブランド名の言及、ソーシャルでのエンゲージメントも加わり、より立体的にブランドの存在感を捉えられる一方、単純比較は難しくなります。ベンチマークを行う前に、どのメディアを対象に含めるかを明確にしておかないと、数値そのものに意味がなくなってしまいます。

SOVが広告主・CMOにとって重要な理由

  • 競合に対する存在感を数値化できる。 SOVは、自社ブランドがカテゴリー内で競合と比べてどれだけ声を上げられているかを示すもので、認知やセイリエンス(想起されやすさ)の前提条件となります。
  • 投資姿勢のシグナルになる。 SOVが高いことは、ブランドが「見られるための投資」を行っている証拠です。逆にSOVの低下は、売上に影響が出るよりも先に認知の低下として表れることが少なくありません。
  • 単なる見栄えの数字ではなく、計画に使える指標である。 SOMと照らし合わせて読み解くことで、自社の投資が「守り」「現状維持」「攻め」のどの段階にあるかが分かります。

SOVの限界

  • SOVが高いからといって成功が約束されるわけではありません。電波を独占するほど広告を出稿していても、その注目を好意度や売上に転換できないブランドもあります。
  • SOVはブランドの健全性そのものを表す指標ではありません。SOVが低くても、ロイヤルティ、商品力、流通網、サービス品質で声の大きい競合を上回るブランドは存在します。
  • SOVだけを追い求めても、いずれ効果は頭打ちになります。SOVが機能するのは、その注目に見合う商品やブランド体験が伴っている場合に限られます。

SOVとSOM、そして「エクセスSOV」という成長モデル

SOVが予測するもっとも有用な情報は、市場シェアが今後どちらに動くかという方向性です。その鍵を握るのが、SOVとSOMのギャップです。ブランドのSOVがSOMを上回っていれば市場シェアは伸びる傾向にあり、逆にSOVがSOMを下回っていれば縮小する傾向にあります。このギャップはエクセス・シェア・オブ・ボイス(ESOV)と呼ばれます。

このモデルは、レス・ビネットとピーター・フィールドがIPA(英国広告実務者協会)のために行った効果検証研究(『The Long and the Short of It』2013年、『Media in Focus』2017年)に基づくもので、IPAデータバンクに蓄積された数多くのケーススタディを土台としています。両氏が示した中心的な発見は、ESOVが10ポイント高まるごとに、年間の市場シェア成長率がおよそ0.5ポイント押し上げられるという相関関係です。ただし、この効果はブランドの規模やカテゴリーによって大きく異なり、なかでもクリエイティブの質は、その効果を何倍にも増幅させる決定的な要因になります。これはあくまで計画立案のための目安であり、保証されたものではありません。

リドル(Lidl)は、英国におけるこのモデルの典型例として知られています。2014年当時、同社のSOVは約9%であったのに対しSOMは約3%と、大きなプラスのESOVを抱えていました。しかし市場シェアの伸びは当初、緩やかなものにとどまりました。その要因は二つあります。ひとつはブランドイメージで、消費者は「価格が安い=品質が低い」と捉えていたこと。もうひとつはブランド規模で、小規模なブランドほど気づいてもらうために過剰投資が必要になることです。実際に商品を試してもらって初めて、ロイヤルティが築かれていきました。ESOVを維持し続けた結果、リドルの市場シェアはおよそ5年かけて最終的に倍増しました。これはESOVが成長を後押しする証拠であると同時に、その効果は即座に切り替わるものではなく、時間差を伴って現れることも示しています。

「SOVの意味」と「Share of Market」を軸としたグラフで、シェア・オブ・ボイスとシェア・オブ・マーケットが必ずしも直接相関しないことを示している。

SOV測定に使えるツール

Semrush、Brandwatch、Google Analyticsといったプラットフォームは、有料・オーガニック・ソーシャルそれぞれの領域でSOVの構成要素を計測できます。ツールを選ぶ際は、対応メディアの範囲、データの正確性、そして既存の計測環境とどれだけスムーズに連携できるかを見極めることが重要です。ペイド、オウンド、アーンドのすべての存在感を一つのツールだけで把握できることはないため、多くのブランドは複数のツールを組み合わせて全体像を捉えています。また、期間をまたいで比較する際は、定義を一貫させることではじめて、その推移を正しいトレンドとして読み取ることができます。

オーガニック検索におけるシェア・オブ・ボイス

SEOの文脈におけるシェア・オブ・ボイスとは、対象とするキーワード群において、獲得しうるオーガニッククリックや露出の総量のうち、自社ブランドが競合に対してどれだけの割合を占めているかを示す指標です。これを伸ばす鍵は、ターゲットオーディエンスが実際に検索する言葉に対して本当に役立つコンテンツを発信し続けること、被リンクや引用を獲得すること、そして同じキーワード群における競合の動きを継続的に追うことにあります。

SOVを高める方法

  1. オーディエンスを理解する。 ブランドが伝えたいことではなく、ターゲットオーディエンスが実際に抱えるニーズや意思決定の基準を軸にメッセージを組み立てます。
  2. 継続的なコンテンツ発信にコミットする。 購買層が実際に使うチャネルで、関連性の高いコンテンツを途切れず発信し続けることは、散発的な出稿よりもはるかに大きく存在感を積み上げます。
  3. ソーシャルを戦略的に活用する。 一方的に発信するのではなく、対話し、コンテンツを広め、カテゴリー内の会話に参加します。
  4. 信頼される発信者と組む。 インフルエンサーやカテゴリーの専門家は、自身を信頼するオーディエンスへとリーチを広げてくれます。
  5. 競合の動向を追う。 競合のSOVを継続的に把握することで、彼らが手薄になっている領域と、逆に攻め込んでいる領域が見えてきます。
  6. ペイドメディアに投資する。 規律をもって運用されるペイドメディアは、SOVをもっとも速く動かせるレバーであり、成長戦略が拠り所とするESOVを築く手段でもあります。

シェア・オブ・ボイスを築くには、時間と一貫性、そして自社がカテゴリー内でどの位置にいるかを正確に把握する視点が欠かせません。SOMと照らし合わせ、ESOVとして管理することで、売上データが追いつく前にCMOが動ける、数少ない先行指標のひとつになります。

参考文献・関連リンク: